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保育士不足が子どもたちに与える影響は?現状と、現時点で行われている解決策を紹介

保育士不足の現状|深刻化する人手不足と原因

近年、保育士不足が深刻化しており、社会問題となっています。ニュースなどで「待機児童問題」という言葉を耳にすることも多いでしょう。
この記事では、保育士不足の現状と、その原因について詳しく解説します。

保育士不足の現状:有効求人倍率、待機児童数

保育士の有効求人倍率は、近年高い水準で推移しています。厚生労働省の発表によると、令和5年4月時点の保育士の有効求人倍率は、全国平均で2.45倍となっています。これは、保育士1人に対して、2.45件の求人があるということを意味します。地域によっては、さらに高い倍率となっているところもあります。特に、都市部では保育士不足が深刻で、求人を出してもなかなか応募がないという状況が続いています。

保育士不足は、待機児童問題にもつながっています。
待機児童とは、保育所などの利用を希望しているにも関わらず、保育所に入所できない児童のことです。
厚生労働省の発表によると、令和4年4月時点の全国の待機児童数は2,944人となっています。
これは、前年より減少してはいるものの、依然として多くの待機児童が存在していることを示しています。

(※)出典:

  • 厚生労働省「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」
  • 厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)」及び「令和4年4月1日の待機児童数調査のポイント」
    (https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27737.html)

これらのデータから、保育士不足が非常に深刻な状況であることがわかります。保育士不足は、保育の質の低下や、子どもの安全確保にも影響を与えるため、早急な対策が必要です。

保育士不足の原因

保育士不足の原因は、一つではありません。さまざまな要因が複合的に絡み合って、保育士不足を引き起こしています。主な原因としては、以下の点が挙げられます。

  • 低い給料: 保育士の給料は、他の職種に比べて低い傾向があります。厚生労働省の調査によると、保育士の平均年収は、全産業の平均年収を下回っています。保育士の仕事は、子どもの命を預かり、成長をサポートするという、非常に責任が重く、専門性の高い仕事です。しかし、その仕事内容に見合った給料が支払われていないと感じる保育士が多いのが現状です。
  • 長い労働時間: 保育士は、子どもの保育だけでなく、書類作成や行事の準備など、さまざまな業務をこなさなければなりません。そのため、労働時間が長くなりがちで、残業や持ち帰り仕事が多いという現状があります。また、保育士不足のため、有給休暇が取りにくい、希望する日に休みが取れないという問題もあります。
  • 重い責任: 保育士は、子どもの命を預かるという、非常に責任の重い仕事です。常に子どもの安全に気を配り、事故や怪我がないように注意しなければなりません。また、子どもの成長に合わせた適切な保育を提供することも、保育士の重要な役割です。これらの責任の重さから、精神的な負担を感じ、保育士を辞めてしまう人も少なくありません。
  • 保護者対応の難しさ: 近年、モンスターペアレントと呼ばれるような、理不尽な要求をする保護者が増えていると言われています。保育士は、保護者からのクレームや要望に対応しなければならず、精神的なストレスを感じることがあります。また、保護者とのコミュニケーションがうまくいかないと、保育に支障が出たり、保護者からの信頼を失ったりすることもあります。
  • 人間関係の悩み: 保育士の職場は、女性が多い職場であり、人間関係が複雑になりやすい傾向があります。保育士同士のいじめや派閥争い、園長や主任保育士からのハラスメントなどが、退職の原因となることも少なくありません。また、保育士は、チームで協力して保育を行うため、同僚との連携がうまくいかないと、仕事に支障が出たり、ストレスを感じたりすることがあります。

これらの要因が複合的に絡み合い、保育士不足を引き起こしています。保育士不足を解消するためには、これらの原因を一つずつ解決していく必要があります。

保育士不足が子どもたちに与える影響|保育の質の低下、事故のリスク

保育士不足は、保育園だけの問題ではありません。保育士不足は、子どもたちの成長や発達に深刻な影響を与える可能性があります。この章では、保育士不足が子どもたちに与える影響について解説します。

影響1:保育の質の低下

保育士不足によって、最も懸念されるのが保育の質の低下です。保育士が不足すると、子ども一人ひとりに対する丁寧な保育が難しくなります。例えば、

具体的な例

  • 一人ひとりに寄り添った保育ができない:
    保育士1人あたりが担当する子どもの人数が増えると、子ども一人ひとりの個性や発達段階に合わせた、きめ細やかな保育が難しくなります。
    例えば、

    • 泣いている子どもをすぐに抱っこしてあげられない
    • 子どもの「見て見て!」攻撃に十分に応えられない
    • 子どもの質問に丁寧に答えてあげられない

    など、子どもたちの欲求に十分に応えられなくなる可能性があります。

  • 行事やイベントの準備が十分にできない:
    保育士は、子どもの保育だけでなく、書類作成や行事の準備など、さまざまな業務をこなさなければなりません。
    保育士が不足すると、これらの業務に十分な時間を割くことができなくなり、行事やイベントの準備が十分にできなくなる可能性があります。
    例えば、

    • 運動会やお遊戯会の練習時間が短くなる
    • 誕生日会の準備が簡素になる
    • 遠足などの行事が中止になる

    など、子どもたちの楽しみが減ってしまう可能性があります。

保育の質が低下すると、子どもの成長に悪影響を及ぼすだけでなく、保護者からの信頼も失うことになります。

影響2:子どもの安全が脅かされる

保育士不足は、子どもの安全を脅かすことにもつながります。保育士1人あたりが担当する子どもの人数が増えると、子どもたちに目が行き届かなくなり、事故や怪我のリスクが高まります。例えば、

具体的な例

  • 子どもが転んで怪我をしたのに気づくのが遅れる
  • 子ども同士の喧嘩に気づくのが遅れ、怪我につながる
  • 誤飲や窒息などの事故が発生するリスクが高まる

など、さまざまな危険が考えられます。

また、保育士の負担が増えることで、

  • 心身ともに疲弊し、注意力が散漫になる
  • 精神的な余裕がなくなり、子どもに対して適切な対応ができなくなる

など、虐待や不適切保育のリスクが高まる可能性も指摘されています。

子どもの安全を守るためには、十分な人数の保育士を配置することが不可欠です。

影響3:子どもの発達への悪影響

保育士不足によって、保育の質が低下し、子どもの安全が脅かされることは、子どもの発達に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、乳幼児期は、人間形成の基礎を築く上で非常に重要な時期です。この時期に、十分な愛情を受け、適切な保育を受けることが、子どもの健やかな成長には欠かせません。

具体的な例:

  • 愛着形成の阻害:
    保育士が不足すると、子ども一人ひとりに十分な関わりを持つことが難しくなります。
    特に乳幼児期は、特定の大人との愛着関係を築くことが重要ですが、保育士が頻繁に変わったり、十分に構ってもらえなかったりすると、愛着形成が阻害される可能性があります。
  • 言葉の発達の遅れ:
    保育士との会話や絵本の読み聞かせなどは、子どもの言葉の発達を促す上で非常に重要です。
    保育士が不足すると、子どもと十分なコミュニケーションを取ることができなくなり、言葉の発達が遅れる可能性があります。
  • 社会性の発達の遅れ:
    保育園は、子どもが初めて出会う社会です。
    保育士や友達との関わりを通して、社会性や協調性を学びます。
    保育士が不足すると、子ども同士のトラブルが増えたり、集団での活動が十分にできなかったりするなど、社会性の発達が遅れる可能性があります。

保育士不足は、子どもたちの成長にさまざまな悪影響を与える可能性があります。保育士不足を解消し、子どもたちが安心して過ごせる保育環境を整えることが、急務となっています。

保育士不足の解決策|国や自治体の取り組み、保育園の工夫

保育士不足は、子どもたちの成長や発達に深刻な影響を与えるだけでなく、保護者の就労や社会全体の経済活動にも悪影響を及ぼします。保育士不足を解決するためには、国や自治体、保育園、そして社会全体での取り組みが必要です。この章では、保育士不足の解決策として、国や自治体の取り組み、保育園の工夫について解説します。

国や自治体の取り組み

国や自治体は、保育士不足を解消するために、さまざまな取り組みを行っています。

  • 保育士の処遇改善:
    保育士の給料を上げるための補助金制度(処遇改善等加算)を設けています。
    この制度により、保育士の給料は少しずつ改善されてきていますが、まだ十分とは言えません。
    また、自治体によっては、独自の補助金制度を設けて、保育士の給料を上乗せしているところもあります。
    さらに、保育士の宿舎借り上げ支援事業を行う自治体も増えています。
    これは、保育士が賃貸住宅に住む場合、家賃の一部を補助する制度で、特に都市部で有効な施策です。
  • 保育士試験の年2回実施:
    保育士試験を年2回実施することで、保育士資格取得の機会を増やし、保育士不足の解消を目指しています。
    以前は年1回だった試験が、年2回になったことで、受験のチャンスが増え、保育士資格取得者が増えることが期待されています。
  • 保育士養成施設の定員増:
    保育士を養成する大学や専門学校などの定員を増やすことで、保育士のなり手を増やすことを目指しています。
    また、保育士養成課程のカリキュラムを見直し、より実践的な内容にすることで、保育士の質の向上も図っています。
  • 潜在保育士の復職支援:
    潜在保育士とは、保育士資格を持っているものの、保育士として働いていない人のことです。
    潜在保育士は全国に数十万人いると言われており、これらの人材を保育現場に呼び戻すことが、保育士不足解消の鍵となります。
    国や自治体は、潜在保育士の復職を支援するために、

    • 研修会の開催
    • 就職相談会の実施
    • 復職支援金の支給

    などを行っています。

これらの取り組みにより、保育士不足は徐々に改善されてきていますが、まだ十分とは言えません。国や自治体には、さらなる対策が求められています。

保育園の工夫

保育士不足を解消するためには、国や自治体の取り組みだけでなく、保育園側の工夫も必要です。保育園は、保育士が働きやすい職場環境を整えることで、保育士の定着率を高め、離職を防ぐことができます。

  • ICT化による業務効率化:
    保育士の仕事は、子どもの保育だけでなく、書類作成や保護者対応など、多岐にわたります。
    これらの業務を効率化するために、ICT(情報通信技術)を導入する保育園が増えています。
    例えば、

    • タブレット端末を使って、子どもの登降園管理や連絡帳の作成を行う
    • 保育計画や日誌などをクラウド上で共有する
    • オンライン会議システムを使って、職員会議や保護者会を行う

    など、ICT化によって、保育士の事務作業の負担を軽減し、子どもと向き合う時間を増やすことができます。

  • 働きやすい職場環境づくり:
    保育士が長く働き続けられるためには、働きやすい職場環境づくりが重要です。
    具体的には、

    • 良好な人間関係の構築
    • 労働時間の短縮
    • 休暇取得の推奨
    • 福利厚生の充実

    など、さまざまな取り組みが必要です。
    また、保育士の意見を聞き、保育に反映させることも大切です。
    保育士が「自分たちの意見が尊重されている」「自分たちも保育園の運営に参加している」と感じることができれば、職場への愛着が深まり、離職を防ぐことにつながります。

  • 保育士の負担軽減:
    保育士の負担を軽減するためには、

    • 複数担任制の導入
    • 保育補助者の配置
    • 業務分担の見直し

    など、さまざまな方法があります。
    複数担任制を導入することで、保育士一人当たりの負担を軽減し、子ども一人ひとりに寄り添った保育ができるようになります。
    また、保育補助者を配置することで、保育士は保育に集中できるようになります。
    さらに、業務分担を見直し、保育士以外の職員でもできる業務は、他の職員に任せることで、保育士の負担を軽減することができます。

保護者にできること

保育士不足は、保育園だけの問題ではありません。
保護者にもできることがあります。

  • 保育士への感謝を伝える:
    日頃から保育士に感謝の気持ちを伝えましょう。
    「いつもありがとうございます」「先生のおかげで、子どもが成長しました」など、感謝の言葉を伝えたり、手紙やプレゼントを渡したりするのも良いでしょう。
  • 保育園の運営に協力する:
    行事の準備や手伝い、保護者会への参加など、できる範囲で保育園の運営に協力しましょう。
  • 保育士不足の問題に関心を持つ:
    保育士不足の原因や、保育士の労働環境などについて、保護者も関心を持つことが大切です。
    保育士不足の問題について理解を深めることで、保育士をサポートする意識が高まり、保育士との良好な関係を築くことにもつながります。

保育士不足は、社会全体で解決すべき問題です。国や自治体、保育園、そして私たち一人ひとりが、それぞれの立場でできることを行い、より良い保育環境を築いていくことが大切です。

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