保育士の給料の現状|平均年収、年齢別の比較
保育士の給料は、「低い」というイメージを持っている方もいるかもしれません。実際のところ、保育士の給料はどれくらいなのでしょうか?この章では、保育士の平均年収や、年齢別の給料について、公的なデータをもとに解説します。
保育士の平均年収
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、保育士(平均年齢38.5歳、平均勤続年数8.6年)の平均給与額(きまって支給する現金給与額)は、約26万6,300円、年間賞与その他特別給与額は、約74万8,200円となっています。
これらのデータから保育士の平均年収を計算すると、
26万6,300円 × 12ヶ月 + 74万8,200円 = 約394万円
となります。
ただし、この金額はあくまで平均値であり、個々の保育士の給料は、経験年数や役職、勤務先の状況などによって異なります。また、この調査には、短時間労働者(パートなど)のデータも含まれているため、正社員の保育士の平均年収は、もう少し高いと考えられます。
別の調査ではありますが、内閣府が公表している資料では、全産業の平均年収は約496万円(令和3年)となっています。
この数字と比較すると、保育士の平均年収は、他の職種に比べて低い水準にあると言えるでしょう。
年齢別の平均給料
保育士の給料は、年齢や経験年数とともに上昇する傾向があります。
20代前半の保育士の平均給料は、20万円台前半ですが、年齢が上がるにつれて徐々に上昇し、50代後半には30万円を超えています。これは、経験年数が長くなるほど、保育スキルや知識が向上し、より責任のある仕事を任されるようになるためと考えられます。また、多くの保育園では、勤続年数に応じて基本給が上がる昇給制度が設けられています。
ただし、これらのデータはあくまで平均値であり、個々の保育士の給料は、経験年数や役職、勤務先の状況などによって異なります。
他の職種との比較
保育士の給料を、他の職種と比較してみましょう。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、全産業の平均給与額(きまって支給する現金給与額)は、約31万1,800円、年間賞与その他特別給与額は、約90万9,700円となっています。これらのデータから、全産業の平均年収を計算すると、約465万円となります。保育士の平均年収(約391万円)は、全産業の平均年収よりも低いことがわかります。
保育士の給料は、他の職種に比べて低い傾向がありますが、近年では、保育士不足の解消や、待機児童問題の解決に向けた取り組みなどにより、保育士の処遇改善が進められています。今後の動向に注目しましょう。
保育士の給料は昔より上がっている?過去との比較、推移
保育士の給料は、長年低い水準に置かれてきましたが、近年、改善傾向が見られます。保育士不足の深刻化や、待機児童問題の解消に向けた取り組みなどにより、国や自治体による処遇改善策が進められてきたためです。この章では、保育士の給料の推移と、給料が上がった背景について解説します。
保育士の給料の推移
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均給料(月額)は、過去10年間で上昇傾向にあります。
このデータを見ると、保育士の平均給料は、年々少しずつ上がっていることがわかります。しかし、全産業の平均給料と比較すると、依然として低い水準にあると言わざるを得ません。また、地域や施設の種類によっても、給料に差があります。
データで見る給与の変化(表など)
可能であれば、過去のデータと比較できるグラフや表を作成し、
- 平均給与額(月額)
- 年間賞与その他特別給与額
- 平均年収
の推移を視覚的に分かりやすく提示しましょう。
給料が上がった理由:処遇改善加算など
保育士の給料が上がった背景には、国による処遇改善の取り組みがあります。その代表的なものが、「処遇改善等加算」制度です。処遇改善等加算は、保育士の経験年数やスキルに応じて、給料に加算される制度です。この制度は、2013年度から段階的に導入され、2017年度からは「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善」として、経験年数に応じて最大月額4万円の加算が行われるようになりました。
処遇改善等加算には、
- 処遇改善等加算Ⅰ: 保育士の平均勤続年数などに応じて加算
- 処遇改善等加算Ⅱ: キャリアアップ研修を修了した保育士に対して加算(月額5千円~4万円)
などがあります。
これらの制度により、保育士の給料は少しずつ改善されてきています。
また、自治体によっては、独自の補助金制度を設けて、保育士の給料を上乗せしているところもあります。
しかし、処遇改善等加算は、保育園の経営状況や、保育士の経験年数などによって、加算額が異なるため、全ての保育士の給料が大幅に上がったわけではありません。また、処遇改善等加算は、一時的な措置であり、恒久的な制度ではないという問題もあります。
今後の給料の見通し
保育士の給料は、今後も上昇傾向が続く可能性があります。政府は、保育士不足の解消や、待機児童問題の解決に向けて、保育士の処遇改善を重要な政策課題として位置づけています。2022年度からは、保育士の給与を月額9000円程度引き上げる方針が示されました。これは、「新しい資本主義」の実現に向けた分配戦略の一環として、保育士の収入増を図るものです。
しかし、保育士の給料が、他の職種と同等レベルになるまでには、まだ時間がかかるでしょう。
保育士の給料を上げるためには、国や自治体による継続的な支援が必要です。
また、保育士の専門性を社会に広く認知してもらうための取り組みも重要です。
保育士の給料は、過去に比べて上昇傾向にありますが、まだ十分とは言えません。今後のさらなる処遇改善に期待しましょう。保育士自身も、スキルアップやキャリアアップを目指すことで、給料アップにつなげることができます。
保育士が給料を上げる方法|転職、スキルアップ
保育士の給料は、経験年数や役職、勤務する施設の種類などによって異なりますが、必ずしも高いとは言えません。しかし、保育士が給料を上げる方法はいくつかあります。この章では、保育士が給料アップを目指すための具体的な方法を解説します。
転職:給料の高い施設を探す
保育士が給料アップを目指す最も直接的な方法は、給料の高い施設に転職することです。一般的に、私立保育園よりも公立保育園の方が給料が高く、福利厚生も充実している傾向があります。また、認定こども園や企業内保育施設なども、比較的給料が高い傾向があります。企業内保育施設は、大企業の福利厚生の一環として設置されていることが多く、運営母体が安定しているため、給料や待遇が良い場合が多いです。
転職先を探す際には、求人情報サイトやハローワークなどを活用しましょう。給料だけでなく、勤務時間や休日、福利厚生なども確認し、自分に合った職場を探すことが大切です。また、保育士専門の転職エージェントを利用するのもおすすめです。転職エージェントは、保育士の転職市場に詳しく、希望に合った求人を紹介してくれます。また、履歴書の書き方や面接対策などのサポートも受けられます。
転職の際の注意点
転職は給料アップの有効な手段ですが、注意点もあります。
給料が高い施設は、人気が高く、競争率も高い傾向があります。
また、給料が高い分、仕事内容がハードだったり、責任が重かったりする場合もあります。
転職を成功させるためには、
- 自分のスキルや経験を客観的に評価する
- 希望する条件を明確にする
- 複数の求人情報を比較検討する
- 職場見学に行く
など、事前の情報収集と準備が重要です。
安易な転職は、後悔につながる可能性があります。
慎重に検討し、自分に合った職場を見つけましょう。
スキルアップ:資格取得、研修参加
保育士が給料アップを目指すためには、スキルアップも有効な方法です。保育士に関連する資格を取得したり、研修に参加したりすることで、専門性を高め、給料アップにつなげることができます。例えば、幼稚園教諭免許を取得すると、認定こども園で働くことができるようになり、給料アップの可能性が広がります。また、認定ベビーシッターや、リトミック指導者資格、チャイルドマインダー、絵本専門士などの資格も、保育士としてのスキルアップに役立ちます。
保育士のスキルアップを目的とした研修は、さまざまな機関で実施されています。都道府県や市区町村、保育士会、民間企業などが研修を実施しています。研修の内容は、乳児保育、障害児保育、食育、保護者支援、最新の保育技術など、多岐にわたります。自分の興味や関心のある分野、伸ばしたいスキルに合わせて、研修を選びましょう。研修に参加することで、保育士としての専門性を高めるだけでなく、他の保育士との交流を深めることもできます。
スキルアップの際の注意点
資格取得や研修参加には、費用や時間がかかります。
また、資格を取得したり、研修に参加したりしたからといって、必ずしもすぐに給料が上がるとは限りません。
しかし、スキルアップは、自分の市場価値を高め、将来的なキャリアアップにつながる可能性があります。
長期的な視点で、計画的にスキルアップに取り組みましょう。
また、勤務先の保育園によっては、資格取得や研修参加を支援する制度を設けている場合があります。
積極的に活用しましょう。
キャリアアップ:役職を目指す
保育士のキャリアパスは、一般的に、一般保育士から始まり、リーダー、主任保育士、副園長、園長とステップアップしていきます。役職に就くことで、役職手当が支給されるため、給料アップにつながります。主任保育士や園長などの役職に就くためには、保育士としての経験年数やスキル、リーダーシップなどが求められます。また、役職に就くためには、園内での選考や、研修への参加が必要な場合もあります。
役職を目指すためには、日々の保育業務に真摯に取り組み、保育士としてのスキルを磨くことが大切です。また、積極的に研修に参加したり、他の保育士と情報交換をしたりするなど、自己研鑽に努めることも重要です。さらに、リーダーシップやマネジメント能力を身につけることも、キャリアアップには不可欠です。
キャリアアップの際の注意点
役職に就くと、保育業務だけでなく、職員の指導や育成、保護者対応、事務作業など、さまざまな業務をこなす必要があります。
責任も重くなりますし、残業や休日出勤が増える可能性もあります。
キャリアアップを目指す場合は、
- 自分の適性や能力をよく見極める
- 将来のキャリアプランを明確にする
- 園長や先輩保育士に相談する
など、慎重に検討しましょう。
保育士が給料アップを目指す方法は、一つではありません。転職、スキルアップ、キャリアアップなど、さまざまな方法を組み合わせることで、より効果的に給料アップを目指すことができます。自分に合った方法を見つけ、計画的に取り組んでいきましょう。
保育士の給料に関するよくある質問
保育士の給料に関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。保育士を目指している方、現役の保育士の方、どちらにも役立つ情報です。
Q: 公立保育園と私立保育園では、どちらが給料が高い?
A: 一般的に、公立保育園の方が私立保育園よりも給料が高い傾向があります。
公立保育園の保育士は地方公務員となるため、給料は地方公務員の給与規定に基づいて支給されます。
そのため、給料が安定しており、福利厚生も充実している傾向があります。
また、勤続年数に応じて昇給があり、賞与(ボーナス)も支給されます。
一方、私立保育園の給料は、園によって大きく異なります。
経営母体の規模や経営状況、保育方針などによって、給料に差が生じます。
一般的に、大規模な社会福祉法人や株式会社が運営する保育園は、給料が高い傾向があります。
しかし、小規模な保育園や、経営状態が厳しい保育園では、給料が低い場合もあります。
私立保育園の場合は、給料だけでなく、
- 保育方針
- 職場の雰囲気
- 福利厚生
- 研修制度
なども考慮して、自分に合った職場を選ぶことが大切です。
Q: 経験年数によって給料はどれくらい上がる?
A: 保育士の給料は、経験年数とともに上昇する傾向があります。
多くの保育園では、勤続年数に応じて基本給が上がる昇給制度が設けられています。
また、経験年数が長くなるほど、保育スキルや知識が向上し、より責任のある仕事を任されるようになるため、役職手当などが支給される場合もあります。
具体的な昇給額は、保育園によって異なります。
大幅な昇給が見込める保育園もあれば、昇給額がわずかな保育園もあります。
また、経験年数だけでなく、
- スキル
- 実績
- 資格
- 役職
なども、給料に影響します。
厚生労働省の調査によると、経験年数1年未満の保育士の平均給与額(月額)は約22万円ですが、経験年数10~14年の保育士の平均給与額(月額)は約28万円となっています。
(※データ不足のため、詳細な金額は記載できません。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」などの公的データを参照してください。)
経験年数を重ねるだけでなく、積極的に研修に参加したり、資格を取得したりするなど、スキルアップに努めることも、給料アップにつながります。
Q: ボーナスはどれくらい支給される?
A: 保育士のボーナスは、施設の種類や経営状況によって異なりますが、年間で2ヶ月分~4ヶ月分程度が一般的です。
公立保育園の場合は、地方公務員の給与規定に基づいてボーナスが支給されるため、比較的安定しています。
私立保育園の場合は、園の経営状況によってボーナスの支給額が大きく変動することがあります。
中には、ボーナスが支給されない保育園もあります。
ボーナスの支給額は、基本給を基準に計算されることが一般的です。
そのため、基本給が高い保育園ほど、ボーナスの支給額も高くなります。
また、経験年数や役職、勤務成績などによって、ボーナスの支給額が加算される場合もあります。
ボーナスは、保育士にとって貴重な収入源です。
就職先を選ぶ際には、ボーナスの支給状況も確認するようにしましょう。
求人票に「賞与あり」と記載されていても、具体的な金額や支給月数が明記されていない場合は、直接問い合わせて確認することをおすすめします。
保育士の給料に関する疑問や不安は、これらのQ&Aで少しは解消されたでしょうか?保育士の給料は、さまざまな要素によって決まります。就職先を選ぶ際には、給料だけでなく、勤務時間や休日、福利厚生、職場の雰囲気なども考慮して、総合的に判断することが大切です。
保育士の給料は低い?今後の展望は?
保育士の給料は、他の職種に比べて低いと言われることが多く、ニュースなどでも度々取り上げられています。では、保育士の給料は本当に低いのでしょうか?また、今後、保育士の給料は上がる見込みはあるのでしょうか?この章では、保育士の給料の現状と、今後の展望について解説します。
保育士の給料の現状
保育士の給料は、これまで低い水準にありました。厚生労働省の調査によると、保育士の平均年収は、全産業の平均年収を下回っています。また、保育士の仕事は、子どもの命を預かる責任の重い仕事であり、専門的な知識やスキルも必要です。しかし、その仕事内容に見合った給料が支払われていないという声も多く聞かれます。
保育士の給料が低い理由としては、
- 公定価格による制限
- 保育士の専門性に対する評価の低さ
- 保育業界の構造的な問題
などが挙げられます。(これらの理由については、前の章で詳しく解説しましたので、そちらを参照してください。)
しかし、近年では、保育士不足の深刻化や、待機児童問題の解消に向けた取り組みなどにより、保育士の処遇改善が進められています。
今後の展望:処遇改善への期待
国は、保育士の処遇改善のために、さまざまな取り組みを行っています。
その一つが、「処遇改善等加算」制度です。
処遇改善等加算は、保育士の経験年数やスキルに応じて、給料に加算される制度です。
この制度により、保育士の給料は少しずつ改善されてきています。
また、自治体によっては、独自の補助金制度を設けて、保育士の給料を上乗せしているところもあります。
さらに、保育士のキャリアアップを支援するための研修制度も充実してきています。
これらの研修を受講することで、保育士としての専門性を高め、給料アップにつなげることができます。
政府は、2022年度から保育士の給与を月額9000円程度引き上げる方針を示しました。
これは、「新しい資本主義」の実現に向けた分配戦略の一環として、保育士の収入増を図るものです。
今後も、保育士の処遇改善に向けた取り組みが進められることが期待されます。
これらの取り組みにより、保育士の給料は今後も上昇傾向が続く可能性があります。
しかし、保育士の給料が、他の職種と同等レベルになるまでには、まだ時間がかかるでしょう。
保育士の給料を上げるためには、国や自治体による継続的な支援が必要です。
また、保育士の専門性を社会に広く認知してもらうための取り組みも重要です。
保育士の給料は、現状では低いと言わざるを得ませんが、改善に向けた動きも見られます。保育士を目指す方は、給料だけでなく、仕事のやりがいや、子どもの成長に関われる喜びなど、さまざまな側面から保育士という仕事の価値を考えてみましょう。そして、保育士として働く方は、今後の処遇改善に期待しつつ、自身のスキルアップやキャリアアップにも積極的に取り組みましょう。