保育士試験の概要|試験科目、受験資格、日程
保育士資格を取得するためには、保育士試験に合格する必要があります。保育士試験は、国家試験であり、年2回(前期・後期)実施されます。この章では、保育士試験の概要(試験科目、受験資格、日程など)について解説します。
試験科目:筆記試験(9科目)と実技試験(3分野から2分野選択)
保育士試験は、筆記試験と実技試験で構成されています。筆記試験は9科目あり、マークシート形式で行われます。実技試験は、3分野から2分野を選択し、実技を行います。
筆記試験の科目一覧と概要
筆記試験の科目は、以下の9科目です。
- 保育原理: 保育の意義や目的、保育所保育指針、子どもの発達などについて問われます。
- 教育原理: 教育の意義や目的、教育の歴史、教育方法などについて問われます。
- 社会的養護: 社会的養護の意義や目的、児童福祉法、児童養護施設などについて問われます。
- 子ども家庭福祉: 子ども家庭福祉の意義や目的、児童福祉法、児童虐待などについて問われます。
- 社会福祉: 社会福祉の意義や目的、社会福祉法、社会保障制度などについて問われます。
- 保育の心理学: 子どもの発達心理学、学習心理学、保育における心理的支援などについて問われます。
- 子どもの保健: 子どもの健康と安全、感染症予防、事故防止などについて問われます。
- 子どもの食と栄養: 子どもの栄養、食育、アレルギー対応などについて問われます。
- 保育実習理論: 保育実習の意義や目的、保育計画の作成、保育技術などについて問われます。
筆記試験は、全科目6割以上の得点で合格となります。
ただし、1科目でも合格基準点に満たない場合は、不合格となります。
一度合格した科目は、3年間有効です。
実技試験の内容と対策
実技試験は、以下の3分野から2分野を選択します。
- 音楽表現に関する技術: 課題曲をピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかで演奏し、弾き歌いを行います。
- 造形表現に関する技術: 与えられた課題について、絵画で表現します。
- 言語表現に関する技術: 与えられた課題について、3歳児向けのお話をします。(口頭試問)
実技試験は、各分野50点満点で、両分野とも6割以上の得点で合格となります。
実技試験対策としては、
- 音楽表現: 課題曲を繰り返し練習し、スムーズに弾き歌いができるようにする。
- 造形表現: 保育に関する絵画の練習をする。時間内に描き終える練習をする。
- 言語表現: 3歳児にわかる言葉で、3分間のお話ができるように練習する。
などの対策が必要です。
受験資格:学歴、実務経験
保育士試験の受験資格は、最終学歴によって異なります。大学、短期大学、専門学校(2年以上)を卒業している場合は、受験資格があります。高等学校卒業の場合は、一定の実務経験(児童福祉施設での2年以上かつ2880時間以上の実務経験など)が必要になります。また、最終学歴に関わらず、「社会福祉士」「介護福祉士」「精神保健福祉士」のいずれかの資格を保有している場合は、保育士試験の一部科目が免除されます。詳細な受験資格については、全国保育士養成協議会のウェブサイトで確認してください。
実務経験として認められる施設は、児童福祉法に基づく施設など、細かく定められています。
自分が働いている、または働いていた施設が実務経験として認められるかどうか、事前に確認しておきましょう。
試験日程:前期と後期の年2回
保育士試験は、前期と後期の年2回実施されます。前期試験は、筆記試験が4月頃、実技試験が7月頃に行われます。後期試験は、筆記試験が10月頃、実技試験が12月頃に行われます。試験日程の詳細は、毎年、全国保育士養成協議会から発表されますので、公式サイトで確認しましょう。
前期試験と後期試験で、試験科目や難易度に違いはありません。
自分のスケジュールや学習状況に合わせて、受験する時期を選びましょう。
保育士試験は、計画的な学習と対策が必要です。試験科目、受験資格、日程などをしっかりと確認し、自分に合った学習計画を立てて、合格を目指しましょう。
保育士試験の合格率・難易度|合格しやすいって本当?
保育士試験の合格率は、どのくらいなのでしょうか?また、試験の難易度は高いのでしょうか?「保育士不足だから、試験は簡単なのでは?」と考えている方もいるかもしれません。この章では、保育士試験の合格率と難易度について、客観的なデータをもとに解説します。
近年の合格率の推移
保育士試験の合格率は、例年20%前後で推移しています。このデータを見ると、保育士試験の合格率は、決して高くないことがわかります。
合格率が20%前後ということは、5人に1人しか合格できない計算になります。保育士不足が深刻化しているにも関わらず、なぜ合格率は低いのでしょうか?
合格率から見る難易度
保育士試験の合格率が低い理由としては、
- 試験科目が9科目と多い
- 出題範囲が広い
- 全科目で6割以上の得点が必要
- 実技試験がある
などが挙げられます。
特に、筆記試験の科目数が多いことが、保育士試験の難易度を上げている要因の一つです。9科目全てを網羅的に学習するには、かなりの時間と労力が必要です。また、全科目で6割以上の得点が必要なため、苦手科目があると合格が難しくなります。さらに、実技試験があることも、保育士試験の難易度を上げています。実技試験は、筆記試験のように暗記だけでは対応できません。日頃からの練習や、実践的なスキルが求められます。
合格率が低い理由
保育士試験の合格率が低い理由としては、上記の試験の難しさに加え、
- 受験者のレベルの差が大きい
- 働きながら受験する人が多い
ことも考えられます。
保育士試験の受験資格には、学歴や実務経験に関する要件があります。
そのため、受験者の年齢層やバックグラウンドはさまざまです。
大学や専門学校で保育について専門的に学んだ人もいれば、実務経験はあるものの、保育について体系的に学んだことがない人もいます。
そのため、受験者のレベルに差が生じやすく、合格率が低くなると考えられます。
また、保育士試験は、働きながら受験する人が多いのも特徴です。
仕事と勉強を両立させるのは大変で、十分な学習時間を確保できない人も少なくありません。
そのため、合格率が低くなると考えられます。
科目別合格率と合格基準点
保育士試験の筆記試験は、科目別の合格が認められています。一度合格した科目は、3年間有効です。そのため、複数回に分けて受験し、全科目の合格を目指すことも可能です。科目別合格率は、科目によって異なります。例年、「教育原理」や「社会的養護」は合格率が低い傾向にあります。これらの科目は、暗記だけでなく、理解力や応用力も求められるため、難易度が高いと言えるでしょう。一方、「子どもの保健」や「子どもの食と栄養」などは、比較的合格率が高い傾向にあります。これらの科目は、暗記中心の学習でも、ある程度対応できるため、比較的点が取りやすいと言えるでしょう。
筆記試験の合格基準点は、全科目6割以上の得点です。ただし、1科目でも合格基準点に満たない場合は、不合格となります。実技試験の合格基準点は、各分野50点満点中、6割以上の得点です。筆記試験、実技試験ともに、合格基準点をクリアしなければ、保育士試験には合格できません。
保育士試験は、決して簡単な試験ではありません。しかし、しっかりと対策をすれば、十分に合格可能です。科目別の合格率や合格基準点を参考に、自分の得意科目や苦手科目を把握し、計画的に学習を進めましょう。
保育士試験は独学でも合格できる?メリット・デメリット
保育士試験の対策として、独学で勉強するか、通信講座や通学講座(予備校)を利用するか、迷っている方もいるでしょう。保育士試験は、決して簡単な試験ではありませんが、独学でも十分に合格可能です。この章では、独学で保育士試験に挑戦するメリット・デメリットについて解説します。
独学のメリット
独学で保育士試験に挑戦する最大のメリットは、費用を抑えられることです。通信講座や通学講座を利用すると、数万円から数十万円の費用がかかります。一方、独学であれば、教材費のみで済むため、費用を大幅に抑えることができます。市販の参考書や問題集は、数千円程度で購入できます。また、インターネット上には、無料で利用できる保育士試験対策のサイトや動画などもたくさんありますので、これらを活用すれば、さらに費用を抑えることができます。
もう一つのメリットは、自分のペースで学習できることです。
通信講座や通学講座は、決められたカリキュラムに沿って学習を進める必要がありますが、独学であれば、自分のペースで学習を進めることができます。
仕事や家事、育児などで忙しい方でも、自分の生活スタイルに合わせて、無理なく学習を続けることができます。
また、自分の得意科目や苦手科目に合わせて、学習時間を調整することも可能です。
具体的には、
- 得意科目は短時間で済ませ、苦手科目に時間をかける
- まとまった時間が取れない場合は、スキマ時間を活用する
- 体調や気分に合わせて、学習する科目を変える
など、自分のペースで自由に学習プランを組み立てられます。
独学のデメリット
独学で保育士試験に挑戦するデメリットとしては、まず、モチベーション維持が難しいことが挙げられます。通信講座や通学講座であれば、一緒に学ぶ仲間や、指導してくれる講師がいるため、モチベーションを維持しやすいですが、独学の場合は、自分一人で学習を進めなければならないため、モチベーションを維持するのが難しくなります。特に、働きながら保育士試験に挑戦する場合は、仕事と勉強の両立が大変で、途中で挫折してしまう人も少なくありません。
また、独学の場合は、わからないことがあっても、すぐに質問や相談ができないというデメリットもあります。
通信講座や通学講座であれば、講師に質問したり、他の受講生に相談したりすることができますが、独学の場合は、自分で調べて解決しなければなりません。
さらに、独学の場合は、情報収集が大変というデメリットもあります。
保育士試験は、試験範囲が広く、出題傾向も変化するため、常に最新の情報を収集する必要があります。
通信講座や通学講座であれば、最新の情報を提供してくれますが、独学の場合は、自分で情報収集をしなければなりません。
具体的には、
- 学習計画の作成・管理
- 教材の選定
- 法改正などの情報収集
- 実技試験対策
などを全て自分で行う必要があります。
独学に向いている人、向いていない人
独学に向いている人は、
- 自己管理能力が高い人
- 計画的に学習を進められる人
- 費用を抑えたい人
- 自分のペースで学習したい人
です。
一方、独学に向いていない人は、
- 一人で学習するのが苦手な人
- モチベーションを維持するのが難しい人
- わからないことをすぐに質問したい人
- 最新の情報を自分で収集するのが苦手な人
です。
独学で保育士試験に挑戦するかどうかは、自分の性格やライフスタイル、学習状況などを考慮して、慎重に判断しましょう。もし、独学に不安を感じる場合は、通信講座や通学講座の利用も検討してみましょう。
保育士試験の勉強方法|独学、通信講座、通学講座
保育士試験の勉強方法は、主に独学、通信講座、通学講座(予備校)の3つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、自分に合った勉強方法を選ぶことが、合格への近道となります。この章では、それぞれの勉強方法のメリット・デメリットを解説します。
独学の勉強方法とポイント
独学で保育士試験に合格するためには、計画的な学習と、効率的な学習方法が重要になります。まず、試験範囲全体を把握し、自分の得意科目と苦手科目を分析しましょう。そして、苦手科目を重点的に学習するなど、自分に合った学習計画を立てましょう。学習計画は、無理のない、実現可能な計画にすることが大切です。最初は、短時間の学習から始め、徐々に学習時間を増やしていくようにしましょう。
独学で使用する教材は、市販の参考書や問題集が中心となります。参考書は、試験範囲全体を網羅しているものを選びましょう。問題集は、過去問を中心に、繰り返し解くことが大切です。過去問を解くことで、出題傾向を把握し、自分の弱点を克服することができます。また、インターネット上には、無料で利用できる保育士試験対策のサイトや動画などもたくさんありますので、これらを活用するのも良いでしょう。
独学で学習を進める上でのポイントは、
- 毎日コツコツと学習を続けること
- わからないことは、参考書やインターネットで調べる
- 過去問を繰り返し解く
- 模擬試験を受けて、実力を確認する
- モチベーションを維持する工夫をする
などです。
モチベーションを維持するためには、
- 目標を明確にする
- 学習の成果を記録する
- 保育士試験に合格した後の自分をイメージする
など、工夫してみましょう。
独学は、費用を抑えられ、自分のペースで学習できるというメリットがありますが、モチベーション維持が難しく、わからないことをすぐに質問できないというデメリットもあります。独学で保育士試験に挑戦する場合は、これらのメリット・デメリットを理解した上で、自分に合った学習計画を立て、計画的に学習を進めることが大切です。
通信講座のメリット・デメリット、選び方
通信講座は、自宅で自分のペースで学習できるのがメリットです。教材が送られてくるので、教材選びに迷うこともありません。また、添削指導や質問対応などのサポート体制が整っている講座も多く、独学のデメリットをカバーすることができます。さらに、通学講座に比べて費用が安いのも魅力です。しかし、通信講座にはデメリットもあります。自分で学習を進める必要があるため、自己管理能力が求められます。また、通学講座のように、講師に直接質問したり、他の受講生と交流したりすることができません。
通信講座を選ぶ際には、
- 教材の内容が充実しているか
- 添削指導や質問対応などのサポート体制が整っているか
- 費用は予算内か
- 自分のライフスタイルに合っているか
などを確認しましょう。
複数の通信講座の資料を取り寄せたり、無料体験講座を受講したりして、比較検討することをおすすめします。
最近では、オンラインで受講できる通信講座も増えています。
動画講義を視聴したり、Web上で質問ができたりと、通学講座に近い感覚で学習できるものもあります。
通学講座のメリット・デメリット、選び方
通学講座(予備校など)は、講師の講義を直接受けることができるのがメリットです。わからないことがあれば、その場ですぐに質問できますし、他の受講生と交流することで、モチベーションを維持することもできます。また、通学講座では、保育士試験の最新情報や、試験対策のノウハウなどを提供してくれるため、効率的に学習を進めることができます。しかし、通学講座にはデメリットもあります。通学に時間とお金がかかること、そして、決められた時間に授業に出席しなければならないことです。また、通信講座に比べて費用が高いのもデメリットです。
通学講座を選ぶ際には、
- 講師の質が高いか
- カリキュラムが充実しているか
- 通学しやすい場所にあるか
- 費用は予算内か
- 自分のライフスタイルに合っているか
などを確認しましょう。
複数の通学講座の資料を取り寄せたり、体験授業に参加したりして、比較検討することをおすすめします。
保育士試験の勉強方法は、独学、通信講座、通学講座の3つがあります。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った勉強方法を選びましょう。
そして、計画的に学習を進め、保育士試験合格を目指しましょう。
保育士試験合格までのスケジュール例|働きながらでも大丈夫?
保育士試験合格までの学習スケジュールは、どのくらいの期間で合格を目指すか、どのくらいの学習時間を確保できるかによって異なります。ここでは、半年間、1年間、そして働きながらの場合の学習スケジュール例と、それぞれの注意点について解説します。
半年間の学習スケジュール例
半年の学習期間で保育士試験合格を目指す場合、かなり集中的な学習が必要になります。
以下は、一例です。
- 最初の1ヶ月:
- 保育士試験の全体像を把握する
- 自分の得意科目、苦手科目を分析する
- 参考書や問題集を一通り読み、基礎知識を習得する
- 2ヶ月目~4ヶ月目:
- 苦手科目を重点的に学習する
- 過去問を繰り返し解き、出題傾向を把握する
- 間違えた問題は、解説をよく読み、理解を深める
- 実技試験対策を始める(ピアノ、絵画、読み聞かせなど、自分に必要な対策)
- 5ヶ月目~6ヶ月目:
- 模擬試験を受け、実力を確認する
- 間違えた問題を徹底的に復習する
- 実技試験の練習を重ねる
- 総復習を行い、知識の定着を図る
半年間の短期集中で合格を目指す場合は、1日あたりの学習時間をしっかり確保し、効率的に学習を進める必要があります。
1年間の学習スケジュール例
1年間の学習期間で保育士試験合格を目指す場合、比較的余裕を持って学習を進めることができます。
以下は、一例です。
- 最初の3ヶ月:
- 保育士試験の全体像を把握する
- 参考書や問題集を一通り読み、基礎知識を習得する
- 自分の得意科目、苦手科目を分析する
- 4ヶ月目~9ヶ月目:
- 全科目をまんべんなく学習する
- 過去問を繰り返し解き、出題傾向を把握する
- 間違えた問題は、解説をよく読み、理解を深める
- 実技試験対策を始める
- 10ヶ月目~12ヶ月目:
- 模擬試験を受け、実力を確認する
- 間違えた問題を徹底的に復習する
- 実技試験の練習を重ねる
- 総復習を行い、知識の定着を図る
1年間の学習期間がある場合は、焦らずじっくりと学習を進めることができます。
ただし、モチベーションを維持することが重要になります。
定期的に模擬試験を受けるなどして、自分の実力を確認しながら学習を進めましょう。
働きながらの場合の学習スケジュール例と注意点
働きながら保育士試験合格を目指す場合は、仕事と勉強の両立が課題となります。
無理のない学習計画を立て、効率的に学習を進める必要があります。
学習時間の確保が難しい場合は、
- 通勤時間
- 昼休み
- 就寝前
などのスキマ時間を活用しましょう。
また、週末にまとめて学習時間を確保するのも良いでしょう。
働きながら保育士試験に挑戦する際の注意点としては、
- 無理のない学習計画を立てる
- 体調管理に気を付ける
- 職場や家族の理解を得る
などがあります。
仕事と勉強の両立は大変ですが、計画的に学習を進め、周りの協力を得ることで、必ず合格できます。
諦めずに、夢に向かって頑張りましょう。
これらのスケジュール例は、あくまでも一例です。自分のライフスタイルや学習ペースに合わせて、学習計画を立てましょう。そして、計画通りに進まなくても、焦らず、柔軟に計画を修正しながら、学習を進めていくことが大切です。