全国保育士会倫理綱領とは?保育士の行動規範をわかりやすく解説
全国保育士会倫理綱領は、保育士が日々の保育実践において、どのように行動すべきかを示した行動規範です。倫理綱領は、保育士が専門職として、子どもの最善の利益を尊重し、保護者や地域社会との信頼関係を築き、より質の高い保育を提供するための指針となるものです。
全国保育士会が策定し、保育士資格を持つすべての人が、この倫理綱領を理解し、遵守することが求められています。
なぜ倫理綱領が必要なのか?保育の専門性と社会的責任
保育士は、子どもの生命を守り、健やかな成長を支えるという、非常に重要な役割を担っています。そのため、保育士には、高い専門性と倫理観が求められます。倫理綱領は、保育士が専門職としての自覚を持ち、責任ある行動をとるための拠り所となるものです。
保育の現場では、さまざまな判断や決断を迫られる場面があります。例えば、子どもの権利と保護者の意向が対立する場合や、同僚との連携がうまくいかない場合などです。倫理綱領は、このような場面で、保育士がどのように考え、行動すべきかの指針を示し、適切な判断をサポートします。
また、保育士は、地域社会の一員として、子育て支援の担い手としての役割も期待されています。倫理綱領は、保育士が地域社会との連携を深め、信頼される存在となるための行動規範を示しています。
倫理綱領の対象者:保育士資格を持つすべての人が守るべきもの
全国保育士会倫理綱領は、保育士資格を持つすべての人を対象としています。保育所、認定こども園、児童養護施設など、どのような施設で働いているかに関わらず、保育士資格を持つ人は、倫理綱領を遵守する義務があります。
また、正規職員だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規職員も、倫理綱領の対象となります。
さらに、保育士試験に合格し、保育士登録をしているものの、現在は保育の現場で働いていないという方も、倫理綱領の対象となります。
倫理綱領は、保育士資格を持つすべての人が、常に意識し、行動の基準とすべきものです。
倫理綱領の位置づけ:法的拘束力はないが、重要な指針
全国保育士会倫理綱領は、法律のような法的拘束力はありません。違反したからといって、罰則が科せられるわけではありません。しかし、倫理綱領は、保育士が専門職として、責任ある行動をとるための重要な指針であり、保育の質を向上させるための道しるべとなるものです。
倫理綱領を遵守することは、保育士としての自覚を高め、専門性を向上させることにつながります。また、倫理綱領を遵守することで、子どもや保護者、地域社会からの信頼を得ることができ、保育士としての誇りを持って働くことができます。
保育士一人ひとりが倫理綱領を理解し、日々の保育実践に活かすことが、保育全体の質の向上につながります。
全国保育士会倫理綱領の全文紹介:前文と8つの項目
全国保育士会倫理綱領は、前文と8つの項目で構成されています。前文では、保育士の使命と基本姿勢が示され、8つの項目では、具体的な行動指針が示されています。ここでは、倫理綱領の全文を紹介します。
倫理綱領の前文:保育士の使命と基本姿勢
全国保育士会倫理綱領の前文は、以下の通りです。
保育士は、児童福祉法に基づき保育士資格をもち、専門的知識及び技術をもって、子どもの保育及び保護者に対する保育に関する指導を行う専門職である。
保育士は、子どもの人権を擁護し、子ども一人ひとりの人格を尊重して保育にあたらなければならない。また、子どもの最善の利益を第一に考え、その福祉を積極的に増進するよう努めなければならない。
保育士は、常に自己研鑽に励み、保育士としての資質の向上に努めなければならない。また、関係機関及び関係団体との連携を図り、地域の子育て支援の充実のために積極的に貢献するよう努めなければならない。
全国保育士会は、保育士がその専門職としての社会的責任と使命を果たすことができるよう、ここに倫理綱領を定める。
子どもの最善の利益の尊重
前文ではまず、保育士は子どもの最善の利益を第一に考え、その福祉を積極的に増進するよう努めなければならないとされています。これは保育士の仕事の根幹をなす部分であり、あらゆる行動の指針となります。
人権の擁護とプライバシーの保護
子ども一人ひとりの人格を尊重し、人権を擁護することが求められています。
また、業務上知りえた子どもや家庭に関する秘密を守り、プライバシーを保護することも強調されています。
専門職としての自覚と研鑽
保育士は専門職としての自覚を持ち、常に自己研鑽に励み、資質向上に努めることが求められています。
また、関係機関や関係団体との連携、地域の子育て支援への貢献も重要です。
倫理綱領の8つの項目:具体的な行動指針
全国保育士会倫理綱領の8つの項目は、以下の通りです。
第1項:子どもに対する責任
保育士は、子ども一人ひとりの人権を尊重し、最善の利益を第一に考えて行動します。
第2項:保護者に対する責任
保育士は、保護者との信頼関係を築き、協力して子どもの成長を支えます。
第3項:同僚に対する責任
保育士は、同僚と協力し、互いに尊重し、学び合い、より良い保育を目指します。
第4項:地域・社会に対する責任
保育士は、地域社会の一員として、子育て支援に貢献します。
第5項:人権擁護のための行動
保育士は、子どもの権利を擁護し、虐待の防止に努めます。
第6項:プライバシー保護の徹底
保育士は、子どもと保護者のプライバシーを保護し、秘密を守ります。
第7項:チーム保育における協力
保育士は、チームの一員として、他の職員と協力し、より良い保育を提供します。
第8項:自己研鑽と専門性の向上
保育士は、常に学び続け、専門知識と技術を高めます。
参考: https://www.z-hoikushikai.com/pdf/rinrikoryo.pdf
全国保育士会倫理綱領の8つの項目を詳しく解説
全国保育士会倫理綱領の8つの項目は、保育士が日々の保育実践において、どのように行動すべきかを示した具体的な行動指針です。ここでは、それぞれの項目について、詳しく解説します。
第1項:子どもへの深い愛情と理解、最善の利益の追求
第1項では、保育士は、子ども一人ひとりの人権を尊重し、最善の利益を第一に考えて行動することが求められています。
具体的には、
- 子どもを個人として尊重し、差別や偏見なく接する。
- 子どもの発達段階や特性を理解し、適切な保育を提供する。
- 子どもの主体性を尊重し、自己肯定感を育む。
- 子どもの安全を確保し、健やかな成長を支える。
- 子どもにとって何が最善かを常に考え、行動する。
などが挙げられます。
保育士は、子どもへの深い愛情と理解をもって、子ども一人ひとりの成長をサポートすることが求められます。
第2項:保護者との信頼関係構築、子育て支援
第2項では、保育士は、保護者との信頼関係を築き、協力して子どもの成長を支えることが求められています。
具体的には、
- 保護者の気持ちに寄り添い、子育ての悩みに共感する。
- 保護者とのコミュニケーションを密にし、子どもの様子を詳しく伝える。
- 保護者の意向を尊重し、共に子育ての方針を考える。
- 保護者のプライバシーを保護し、秘密を守る。
- 保護者からの相談には、誠実に対応する。
- 地域の子育て資源に関する情報を提供するなど、保護者の子育てを支援する。
などが挙げられます。
保育士は、保護者との信頼関係を築き、保護者と協力して子育てに取り組むことが求められます。
第3項:同僚との協力、尊敬、連携
第3項では、保育士は、同僚と協力し、互いに尊重し、学び合い、より良い保育を目指すことが求められています。
具体的には、
- 同僚の意見を尊重し、建設的な議論を行う。
- 同僚の仕事に協力し、助け合う。
- 同僚の良いところを認め、互いに学び合う。
- 同僚のプライバシーを保護し、秘密を守る。
- 職場の人間関係を良好に保ち、働きやすい環境を作る。
などが挙げられます。
保育士は、同僚と協力し、チームワークを発揮して、より良い保育を提供することが求められます。
第4項:地域社会との連携、貢献、多職種協働
第4項では、保育士は、地域社会の一員として、子育て支援に貢献することが求められています。具体的には、
- 地域の関係機関と連携し、子育て支援ネットワークを構築する。
- 地域の子育て情報を収集し、保護者に提供する。
- 地域の子育てイベントに参加し、交流を深める。
- 地域住民からの相談には、誠実に対応する。
- 地域の文化や伝統を尊重し、保育に取り入れる。
- 医師、保健師、児童相談所など、他職種と連携し、専門的な支援を必要とする子どもと家庭をサポートする
などが挙げられます。
保育士は、地域社会との連携を深め、地域の子育て支援に貢献することが求められます。
第5項:子どもの権利擁護、虐待防止
第5項では、保育士は、子どもの権利を擁護し、虐待の防止に努めることが求められています。具体的には、
- 子どもの権利条約を理解し、子どもの権利を尊重する。
- 子ども虐待の兆候に気づき、早期発見に努める。
- 虐待が疑われる場合は、速やかに児童相談所などの関係機関に通告する。
- 虐待を受けた子どものケアに協力する。
- 虐待防止のための研修に参加し、知識や技術を習得する。
などが挙げられます。
保育士は、子どもの権利を守り、虐待から子どもを守るという、重要な役割を担っています。
第6項:秘密保持、個人情報保護
第6項では、保育士は、子どもと保護者のプライバシーを保護し、秘密を守ることが求められています。具体的には、
- 業務上知り得た子どもや保護者の個人情報を、第三者に漏らさない。
- 個人情報を適切に管理し、紛失や漏洩を防ぐ。
- 保護者の同意なしに、子どもの写真や動画をSNSなどに公開しない。
- 個人情報保護に関する法令や規則を遵守する。
などが挙げられます。
保育士は、子どもと保護者のプライバシーを守り、信頼関係を築くことが求められます。
第7項:チームワーク、情報共有、より良い保育の実現
第7項では、保育士は、チームの一員として、他の職員と協力し、より良い保育を提供することが求められています。
具体的には、
- 保育の目標や方針を共有し、協力して保育にあたる。
- 子どもの様子や保育の内容について、情報を共有する。
- 会議や研修に積極的に参加し、意見交換を行う。
- 互いの専門性を尊重し、連携して保育にあたる。
- 問題が発生した場合は、協力して解決策を考える。
などが挙げられます。
保育士は、チームワークを発揮し、他の職員と協力して、より良い保育を提供することが求められます。
第8項:自己啓発、研修、専門性の維持・向上
第8項では、保育士は、常に学び続け、専門知識と技術を高めることが求められています。具体的には、
- 保育に関する研修に積極的に参加する。
- 保育に関する書籍や雑誌を読み、最新の情報を収集する。
- 他の保育園を見学し、良い保育を学ぶ。
- 自己評価を行い、改善点を見つける。
- 資格取得やキャリアアップを目指す。
などが挙げられます。
保育士は、常に自己研鑽に励み、専門性を高めることで、より質の高い保育を提供することができます。
全国保育士会倫理綱領を日々の保育に活かすには?
全国保育士会倫理綱領は、単に暗記するだけでなく、日々の保育実践の中で活かしてこそ、その意味があります。ここでは、倫理綱領を日々の保育に活かすための具体的な方法について解説します。
倫理綱領を常に意識する:判断や行動の基準とする
保育士は、日々の保育の中で、さまざまな判断や行動を求められます。倫理綱領を常に意識し、判断や行動の基準とすることで、より適切な対応ができるようになります。
例えば、
- 子ども同士のトラブルが発生した時、どのように対応すれば子どもの最善の利益になるのか?
- 保護者から難しい要望があった時、どのように対応すれば保護者との信頼関係を損なわずに済むのか?
- 同僚との連携がうまくいかない時、どのようにすればチームワークを高めることができるのか?
など、迷った時、困った時、倫理綱領に立ち返り、どのように行動すべきかを考えることが大切です。
倫理綱領を常に手元に置いておき、定期的に読み返すことも、倫理綱領を意識し続けるために有効です。
事例検討:具体的な場面で倫理綱領を適用する
倫理綱領をより深く理解し、実践に活かすためには、事例検討が効果的です。事例検討とは、実際に起こった事例や、起こりうる事例について、倫理綱領の各項目と照らし合わせながら、どのように対応すべきかを検討するものです。
例えば、
- 「Aちゃんが、友達のおもちゃを取ってしまう。どのように対応すれば良いか?」
- 「Bくんの保護者から、『うちの子は特別扱いしてほしい』と言われた。どのように対応すれば良いか?」
- 「C先生と保育方針が合わず、連携がうまくいかない。どのようにすれば良いか?」
などの事例について、倫理綱領のどの項目が関係しているか、どのように対応すれば倫理綱領に沿った行動になるかを考えます。
事例検討は、一人で行うこともできますが、同僚の保育士と一緒に行うことで、さまざまな視点から問題を捉え、より良い解決策を見つけることができます。
定期的に事例検討会を開催し、倫理綱領に基づいた保育実践について話し合う機会を設けることが大切です。
研修への参加:倫理に関する理解を深める
倫理に関する理解を深めるためには、研修への参加が有効です。全国保育士会や各都道府県の保育士会、自治体などが主催する研修では、倫理綱領に関する講義や、事例検討、グループワークなどが行われます。
研修に参加することで、倫理綱領の解釈や、具体的な保育場面での活用方法について、より深く学ぶことができます。また、他の保育士と意見交換をしたり、悩みを共有したりすることで、新たな気づきを得ることもできます。
積極的に研修に参加し、倫理に関する知識や理解を深め、保育の質を高めていきましょう。
まとめ:全国保育士会倫理綱領は保育士の羅針盤!
この記事では、全国保育士会倫理綱領について、その内容や必要性、日々の保育への活かし方などを解説してきました。倫理綱領は、保育士が専門職として、責任ある行動をとるための重要な指針であり、保育の質を向上させるための道しるべとなるものです。
倫理綱領は、前文と8つの項目で構成されており、保育士の使命と基本姿勢、そして具体的な行動指針が示されています。倫理綱領は、単に暗記するだけでなく、日々の保育実践の中で活かしてこそ、その意味があります。倫理綱領を常に意識し、判断や行動の基準とすること、事例検討を通して倫理綱領の理解を深めること、研修に参加して倫理に関する知識を習得することが大切です。
保育の現場では、さまざまな判断や決断を迫られる場面があります。倫理綱領は、そのような場面で、保育士がどのように考え、行動すべきかの指針を示し、適切な判断をサポートします。倫理綱領は、保育士にとって、進むべき道を示す羅針盤のようなものです。
保育士一人ひとりが倫理綱領を理解し、日々の保育実践に活かすことが、保育全体の質の向上につながります。倫理綱領に基づいた保育を実践することで、子どもたちの最善の利益を守り、保護者や地域社会からの信頼を得ることができ、保育士としての誇りを持って働くことができます。全国保育士会倫理綱領を羅針盤として、より良い保育を目指していきましょう。