保育士と幼稚園教諭の違い|資格、免許、働く場所
保育士と幼稚園教諭は、どちらも子どもと関わる仕事ですが、その役割や仕事内容は大きく異なります。また、働くために必要な資格や免許、働く場所も異なります。この章では、保育士と幼稚園教諭の違いについて、資格、免許、働く場所という3つの観点から解説します。
必要な資格・免許の違い
保育士として働くためには、保育士資格が必要です。保育士資格は、国家資格であり、児童福祉法に基づいて定められています。保育士資格を取得するためには、
- 厚生労働大臣が指定する保育士養成施設(大学、短期大学、専門学校など)を卒業する
- 保育士試験に合格する
のいずれかの方法があります。
一方、幼稚園教諭として働くためには、幼稚園教諭免許状が必要です。幼稚園教諭免許状は、教員免許の一種であり、学校教育法に基づいて定められています。幼稚園教諭免許状には、
- 一種免許状(大学卒業程度)
- 二種免許状(短期大学卒業程度)
- 専修免許状(大学院修士課程修了程度)
の3種類があります。
幼稚園教諭免許状を取得するためには、文部科学大臣が認定する大学、短期大学、大学院などの教職課程を修了し、必要な単位を修得する必要があります。
つまり、保育士は「国家資格」、幼稚園教諭は「教員免許」という違いがあります。
働く場所の違い
保育士と幼稚園教諭では、働く場所も異なります。保育士は、主に保育所(保育園)で働きます。保育所は、保護者が仕事や病気などの理由で、日中、子どもの面倒を見ることができない場合に、保護者に代わって子どもを預かり、保育を行う施設です。保育所は、厚生労働省の管轄であり、児童福祉法に基づく児童福祉施設です。保育所には、
- 認可保育所(国が定めた基準を満たし、都道府県知事(指定都市市長、中核市市長)に認可された保育所)
- 認可外保育所(認可保育所以外の保育所)
があります。
保育士は、保育所以外にも、
- 認定こども園
- 児童養護施設
- 乳児院
- 障害児入所施設
- 児童発達支援センター
- 企業内保育施設
- 病院内保育施設
など、さまざまな場所で働くことができます。
一方、幼稚園教諭は、主に幼稚園で働きます。幼稚園は、満3歳から小学校入学前までの子どもを対象に、教育を行う施設です。幼稚園は、文部科学省の管轄であり、学校教育法に基づく「学校」です。幼稚園には、
- 国立幼稚園(国立大学法人が設置・運営)
- 公立幼稚園(市区町村などの地方自治体が設置・運営)
- 私立幼稚園(学校法人や宗教法人、個人などが設置・運営)
があります。
幼稚園教諭は、幼稚園以外にも、認定こども園で働くことができます。
管轄の違い: 厚生労働省と文部科学省
上述の通り、保育士は厚生労働省の管轄、幼稚園教諭は文部科学省の管轄です。
管轄省庁が異なることで、それぞれの施設の目的や役割、設置基準、職員の配置基準などが異なってきます。
根拠となる法律の違い: 児童福祉法と学校教育法
保育士は児童福祉法、幼稚園教諭は学校教育法と、それぞれ根拠となる法律が異なります。
児童福祉法は、子どもの福祉を保障するための法律であり、保育所は「保育に欠ける子どもを預かる施設」と位置付けられています。
一方、学校教育法は、教育に関する基本的な法律であり、幼稚園は「学校」として位置付けられています。
保育士と幼稚園教諭は、どちらも子どもと関わる仕事ですが、必要な資格や免許、働く場所、管轄、根拠となる法律などが異なります。これらの違いを理解した上で、自分に合った道を選びましょう。
保育士と幼稚園教諭の仕事内容の違い|役割、対象年齢、保育時間
保育士と幼稚園教諭は、どちらも子どもと関わる仕事ですが、その仕事内容には違いがあります。この章では、保育士と幼稚園教諭の仕事内容の違いについて、役割、対象年齢、保育時間などの観点から解説します。
役割の違い:保育と教育
保育士と幼稚園教諭の最も大きな違いは、その役割です。保育士の役割は、「保育」であり、子どもの身の回りのお世話をしながら、心身の健やかな成長をサポートすることです。具体的には、食事や睡眠、排泄などの基本的な生活習慣の確立を支援したり、遊びを通して社会性や協調性を育んだり、保護者に対して子育てに関するアドバイスやサポートを行ったりします。保育士は、子どもの生活全般に関わり、子どもの成長を総合的にサポートする役割を担っています。
一方、幼稚園教諭の役割は、「教育」であり、小学校入学に向けた準備として、子どもたちに集団生活を通して社会性や協調性を身につけさせたり、遊びを通して言葉や数、音楽などの基礎的な知識や能力を身につけさせたりすることです。幼稚園教諭は、教育的な側面から子どもの成長をサポートする役割を担っています。幼稚園では、教育課程(カリキュラム)に基づいて、計画的に教育活動が行われます。
簡単に言うと、保育士は「子どもの生活の場」を支え、幼稚園教諭は「子どもの学びの場」を支えるという違いがあります。
ただし、近年では、保育園でも教育的な活動を取り入れたり、幼稚園でも預かり保育を実施したりするなど、両者の役割は近づいてきています。
対象年齢と保育時間の違い
保育士と幼稚園教諭では、対象年齢と保育時間も異なります。
| 保育士 | 幼稚園教諭 | |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0歳~小学校入学前 | 満3歳~小学校入学前 |
| 保育時間 | 原則8時間(最長11時間) | 標準4時間 |
保育士は、0歳から小学校入学前までの子どもを対象に保育を行います。保育時間は、原則として1日8時間ですが、保護者の就労状況などに応じて、最長11時間まで預けることができます。また、保育園によっては、延長保育や休日保育、夜間保育などを実施しているところもあります。
一方、幼稚園教諭は、満3歳から小学校入学前までの子どもを対象に教育を行います。保育時間(教育時間)は、標準で1日4時間と定められています。ただし、近年では、預かり保育を実施する幼稚園も増えており、保育時間を延長することも可能です。
保育士と幼稚園教諭では、対象年齢と保育時間が大きく異なるため、子どもの年齢や家庭の状況に合わせて、適切な施設を選ぶ必要があります。
一日の仕事内容の違い(具体例)
保育士と幼稚園教諭では、1日の仕事内容も異なります。
以下に、それぞれの1日の仕事内容の例を挙げます。
保育士の1日の仕事内容(例)
- 出勤、園児の受け入れ
- 自由遊び
- 朝の会(歌、挨拶、出席確認など)
- 設定保育(制作、運動、音楽など)
- 給食
- 午睡(お昼寝)
- おやつ
- 自由遊び
- 帰りの会(歌、挨拶、絵本の読み聞かせなど)
- 園児の送り出し
- 保育室の掃除、片付け
- 連絡帳の記入
- 翌日の準備
- 退勤
幼稚園教諭の1日の仕事内容(例)
- 出勤、園児の受け入れ
- 自由遊び
- 朝の会(歌、挨拶、出席確認など)
- 設定保育(制作、運動、音楽など)
- 給食(またはお弁当)
- 自由遊び
- 帰りの会(歌、挨拶、絵本の読み聞かせなど)
- 園児の送り出し
- 保育室の掃除、片付け
- 教育計画の作成
- 教材研究
- 退勤
上記はあくまで一例であり、園や時期、子どもの年齢によって異なります。
保育士は、子どもの生活全般をサポートするため、仕事内容が多岐にわたります。
一方、幼稚園教諭は、教育的な活動が中心となります。
保育士と幼稚園教諭は、どちらも子どもと関わる仕事ですが、その役割や仕事内容は異なります。これらの違いを理解した上で、自分に合った道を選びましょう。
保育士と幼稚園教諭の給料の違い|平均年収、待遇
保育士と幼稚園教諭では、給料や待遇に違いがあるのでしょうか?この章では、保育士と幼稚園教諭の給料の違いについて、平均年収や待遇の面から解説します。
平均年収の比較
保育士と幼稚園教諭の平均年収を比較してみましょう。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均給与額(きまって支給する現金給与額)は、約26万6,300円、年間賞与その他特別給与額は、約74万8,200円で、平均年収は約391万円となっています。一方、幼稚園教諭の平均給与額(きまって支給する現金給与額)は、約26万5,300円、年間賞与その他特別給与額は、約83万5,900円で、平均年収は約402万円となっています(※)。
(※表形式で保育士と幼稚園教諭の平均年収を比較することを推奨します。データは厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」などを参照してください。)
上記のデータを見ると、幼稚園教諭の方が、保育士よりも平均年収が若干高いことがわかります。しかし、この差は、それほど大きくありません。また、これらの金額はあくまで平均値であり、個々の給料は、経験年数や役職、勤務先の状況などによって異なります。
(※)出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
職種(小分類)別のきまって支給する現金給与額、年間賞与その他特別給与額及び年齢
公立と私立での違い
保育士と幼稚園教諭の給料は、公立と私立で異なります。公立保育園の保育士や公立幼稚園の教諭は、地方公務員です。そのため、給料は地方公務員の給与規定に基づいて支給されます。給料は安定しており、福利厚生も充実している傾向があります。また、勤続年数に応じて昇給があり、賞与(ボーナス)も支給されます。
一方、私立保育園の保育士や私立幼稚園の教諭の給料は、園によって大きく異なります。経営母体の規模や経営状況、保育方針などによって、給料に差が生じます。一般的に、大規模な社会福祉法人や学校法人が運営する保育園や幼稚園は、給料が高い傾向があります。しかし、小規模な保育園や幼稚園、経営状態が厳しい保育園や幼稚園では、給料が低い場合もあります。
私立の場合は、給料だけでなく、
- 福利厚生
- 休暇制度
- 研修制度
なども、園によって大きく異なります。
就職・転職を考える際は、これらの点もよく確認しましょう。
福利厚生、待遇の違い
保育士と幼稚園教諭では、福利厚生や待遇にも違いがあります。公立保育園の保育士や公立幼稚園の教諭は、地方公務員であるため、福利厚生が充実しています。例えば、
- 社会保険完備
- 退職金制度
- 住宅手当
- 産休・育休制度
- 研修制度
などがあります。
一方、私立保育園の保育士や私立幼稚園の教諭の福利厚生は、園によって異なります。社会保険は完備されていることが多いですが、退職金制度や住宅手当がない場合もあります。また、産休・育休制度や研修制度も、園によって内容が異なります。
福利厚生や待遇は、長く働く上で重要な要素です。
就職・転職を考える際は、給料だけでなく、福利厚生や待遇もしっかりと確認しましょう。
保育士と幼稚園教諭の給料は、平均年収で比較すると、幼稚園教諭の方が若干高い傾向にあります。しかし、公立と私立、そしてそれぞれの園によって、給料や待遇は大きく異なります。保育士と幼稚園教諭のどちらを目指すか、あるいは転職を考える際には、給料だけでなく、仕事内容や働き方、福利厚生なども含めて、総合的に判断することが大切です。
保育士と幼稚園教諭、どちらを目指すべき?
保育士と幼稚園教諭は、どちらも子どもと関わる仕事ですが、資格や仕事内容、働く場所、給料など、さまざまな違いがあります。どちらの仕事に就くか迷っている方もいるでしょう。この章では、保育士と幼稚園教諭のそれぞれの仕事の魅力や、向いている人の特徴などを解説し、どちらを目指すべきかの判断材料を提供します。
保育士の仕事の魅力、向いている人
保育士の仕事の魅力は、子どもの成長を最も身近な場所でサポートできることです。
0歳から小学校入学前までの幅広い年齢の子どもたちと関わり、食事や睡眠、排泄などの基本的な生活習慣の確立を支援したり、遊びを通して社会性や協調性を育んだりします。
子どもたちの成長を日々実感できることは、保育士にとって何よりのやりがいとなるでしょう。
また、保育士は、保護者との連携も重要な仕事です。
子どもの様子を保護者に伝えたり、子育てに関する相談に乗ったりすることで、保護者から感謝されることも多く、やりがいを感じられます。
保育士に向いているのは、
- 子どもが好きで、子どもの成長をサポートしたいという強い気持ちを持っている人
- 体力があり、子どもと一緒に体を動かして遊ぶことが好きな人
- コミュニケーション能力が高く、子どもや保護者と良好な関係を築ける人
- 責任感が強く、子どもの安全を守ることができる人
- 協調性があり、他の保育士と協力して仕事ができる人
などです。
幼稚園教諭の仕事の魅力、向いている人
幼稚園教諭の仕事の魅力は、教育を通して子どもの成長をサポートできることです。
幼稚園は、小学校入学に向けた準備として、集団生活を通して社会性や協調性を育んだり、遊びを通して言葉や数、音楽などの基礎的な知識や能力を身につけさせたりする場所です。
幼稚園教諭は、教育課程(カリキュラム)に基づいて、計画的に教育活動を行います。
子どもたちが、
- 文字や数字に興味を持つ
- 友達との関わり方を学ぶ
- 自分の考えを表現する
など、成長していく姿を見ることは、幼稚園教諭にとって大きな喜びとなります。
幼稚園教諭に向いているのは、
- 子どもが好きで、子どもの成長をサポートしたいという強い気持ちを持っている人
- 教育に関心があり、子どもに教えることが好きな人
- 計画性があり、計画に基づいて行動できる人
- 表現力豊かで、子どもたちを楽しませることができる人
- 協調性があり、他の教諭と協力して仕事ができる人
などです。
両方の資格・免許を取得するという選択肢も
保育士と幼稚園教諭、どちらの仕事にも魅力を感じる方は、両方の資格・免許を取得するという選択肢もあります。保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持っていると、
- 保育園
- 幼稚園
- 認定こども園
など、さまざまな場所で働くことができます。
特に、近年増加傾向にある認定こども園では、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持っている人材が求められています。
認定こども園でのニーズ
認定こども園は、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ施設です。
認定こども園で働く職員は、「保育教諭」と呼ばれ、原則として、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持っている必要があります。
(※ 幼保連携型認定こども園の場合。その他のタイプでは必須ではない。)
認定こども園は、保護者の就労状況に関わらず、すべての子どもが質の高い教育・保育を受けられるようにすることを目的としています。
今後、認定こども園の数はさらに増加すると予想されており、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持っている人材のニーズはますます高まるでしょう。
保育士と幼稚園教諭、どちらの仕事を選ぶかは、あなたの価値観やライフスタイル、将来の目標などによって異なります。それぞれの仕事の魅力や、向いている人の特徴などを参考に、自分に合った道を選びましょう。また、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を取得することで、仕事の選択肢が広がり、キャリアアップにもつながります。保育士と幼稚園教諭、どちらの道に進むにしても、子どもたちの成長をサポートできる、やりがいのある仕事であることは間違いありません。